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ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:すべての人が、どこででも

ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)と世界母乳育児行動連盟(WABA)
世界保健デーを祝う共同声明 2018年4月7日

世界保健機関 (World Health Organization: WHO) は「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関です。2018年の世界保健デーは、すべての人の心身の健康のため、そしてすべての国のためにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること)が根本的に非常に重要だ、ということを強調します。ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)と世界母乳育児行動連盟(WABA)は、世界保健デー2018そして、持続可能な開発目標(SDGs)のすべての目標にかかわっているUHCの概念を支持し祝います。

母乳育児はSDGs達成のために重要でありUHCにとって不可欠です。今年の世界母乳育児週間のテーマは「母乳育児:いのちの礎(いしずえ)」です。母乳育児と母乳は、子どもと母親、母乳で育てる親の最適な健康を支え、健康なスタートを切るための生物学的な規範(ノーム)です。UHCを提供することで、赤ちゃんと親は、質の高い医療ケアが受けられることが保証されます。とりわけ、母乳育児にかんする適切な情報が提供される産前ケアや新生児ケアは、母乳育児がスムーズに始められるためには不可欠です。

母乳育児は、収入の多少にかかわらずすべての国と家庭の乳児に分け隔てなく健康なスタートを約束します。乳幼児期に最適な栄養を供給し、(栄養失調や過体重といった)栄養不良になる負担を減らします [Scherbaum & Srour, 2016] 。また、乳幼児の食糧安全保障がより保証されるようになります。つまり、食糧安全保障の基準である「栄養的に適切で許容できるくらいの量の食料を、十分に供給されているか? 入手できる権利が与えられているか? 摂取できるか? いつでも入手できる安定性があるか? 」のそれぞれの基準を満たすことで、飢餓のリスクを減らします [Salmon, 2015] 。 母乳育児は、下痢、呼吸器疾患、そのほか致命的な感染症から乳幼児を守ります。より長く母乳を飲んでいた子は、早くに母乳を飲むのをやめた子より認知機能が発達し、一般的な病気にかかるリスクが低くなります[Victora et al., 2016] 。

母乳育児は母親の健康もサポートします。乳がんや卵巣がん [Victora et al., 2016]、 心血管疾患[Peters et al., 2017] にかかるリスクを減らします。自分が目標としていた期間、母乳で育てることができた母親は、産後うつ病にかかるリスクが半減します [Borra et al 2015] 。 授乳期間が長ければ長いほど、皆にとっての利益が大きくなります。

母乳で育てられないことと世界的な経済的負担には関連があります。母乳で育てられなかったことで早死する損失金額は、米国で142億ドル(約1.5兆円)にのぼります [Bartick, 2017] 。 母乳で育てる割合が増えれば、世界中で医療費がより節減できます。例えば、中国で2億2360万米ドル(約237億円)、ブラジルで600万米ドル(約6.4億円)[Rollins, et al., 2016]、インドネシアで1億1800万米ドル(約125億円)[Siregar et al., 2018]の節減になります。母乳で育てられないことに関連した認知機能低下による経済損失は全世界で年間3020億米ドル(約32兆円:全世界の国民総所得GNIの0.49%)と試算されています [Rollins, et al., 2016]。

最も重要なことは、母乳で育てることで多くの命が助かるということです。母乳で育てられる割合が改善されたら、毎年82万3000人の子どもの命と、2万人の母親の命が助かるのです [Victora et al., 2016]。

母親と乳児が納得いくだけ母乳育児をするためには、家族、地域、保健医療システム、職場、そして政府からの支援とケアを必要とします。より質の高い産前ケア、赤ちゃんにやさしい施設での出産 [Ogbo et al., 2015]、そして母乳育児のためにスキルのある支援が継続的に手に入るようになることで、UHCは母と子の健康を増進します。

WABAのWarm Chain of Support for Breastfeeding「母乳育児支援のための温かい輪」運動は、赤ちゃんの最初の1000日に母と子が途切れのないケアを受けられるよう、あらゆる場でさまざまな支援者とつなげようという運動です [WABA, 2018]。その期間は赤ちゃんが生まれるずっと前から2歳かそれ以上になるまで続きます。温かい支援の輪の中で一貫性のある情報を受け取ることで、母と子は継続支援とスキルのある援助を受けることができます。親は、健康に関し情報を得たうえで自発的に選択をするため、最新で正確な根拠に基づく情報と質の高い支援を受ける必要があるのです。

地域でのピアサポート(訳注:同じ母親の立場としての母親どうしの支援) は、母親が自ら設定した母乳育児の目標に達するようエンパワーするのに不可欠です  [Shakya et al., 2017]。保健医療ケアの場を離れてからも母親や家族が母乳育児を継続するために、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)などの母乳育児のピアサポート団体が地域の中で援助を提供しています。LLLIの使命は、母親から母親への励ましと情報提供によって、母乳で育てる世界中のお母さんをサポートし、母乳育児が赤ちゃんとお母さんの心身の健康のために重要であることを、いっそう理解されるよう努めることです。

母乳育児とUHCは手を携えます。家族と母親の保健医療ケアと、病院における「お母さんと赤ちゃんにやさしい実践」を改善することは、UHCのとても重要な要素です。一方、母乳育児は乳幼児と成人の最適な健康のための礎を提供します。母乳育児とUHCは、家族が「可能な最高の健康水準に到達する」よう協働して支えることができるのです。

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La Leche League International:  Lee Claassen Executive Director WABA Secretariat:  Pei Ching Chuah Health & Information Coordinator

参考文献

  1. Bartick, M. C., Schwarz, E. B., Green, B. D., Jegier, B. J., Reinhold, A. G. et al. (2017). Suboptimal breastfeeding in the United States: Maternal and pediatric health outcomes and costs. Maternal Child Nutrition, 13: 12366
  2. Borra, C., Iacovou, M., & Sevilla, A. (2015). New evidence on breastfeeding and postpartum depression: The importance of understanding women’s intentions. Matern Child Health J.;19(4):897-907. doi: 10.1007/s10995-014-1591-z.
  3. ImprovingBirth. (2016). Mother-Friendly Childbirth Initiative.
  4. National Institutes of Health (NIH, 2017). What are the benefits of breastfeeding? https://www.nichd.nih.gov/health/topics/breastfeeding/conditioninfo/benefits
  5. Ogbo, F. A., Agho, K. E., & Page, A. (2015). Determinants of suboptimal breastfeeding practices in Nigeria: Evidence from the 2008 demographic and health survey. BMC Public Health, 15:259. doi: 10.1186/s12889-015-1595-7.
  6. Peters, S. A. E., Yang, L., Guo, Y., Chen, Y., Bian, Z. et al., & the China Kadoorie Biobank Collaboration Group. (2017). Breastfeeding and the Risk of Maternal Cardiovascular Disease: A Prospective Study of 300,000 Chinese Women. JAHA. doi : 10.1161/JAHA.117.006081.
  7. Rollins, N. C., Bhandari, N., Hajeebhoy, N., Horton, S. Lutter, C. K., et al. (2016). Why invest, and what it will take to improve breastfeeding practices? The Lancet, 387: 491-504. doi.org/10.1016/S0140-6736(15)01044-2.
  8. Salmon, L. (2015). Food security for infants and young children: An opportunity for breastfeeding policy? International Breastfeeding Journal, 10:7. doi:10.1186/s13006-015-0029-6.
  9. Scherbaum, V., & Srour, M. L. (2016). The role of breastfeeding in the prevention of childhood malnutrition. In Biesalski H. K., Black R. E. (Eds): Hidden Hunger. Malnutrition and the First 1,000 Days of Life: Causes, Consequences and SolutionsWorld Rev Nutr Diet. Basel, Karger, 2016, vol 115, pp 82-97. doi.org/10.1159/000442075.
  10. Shakya, P, Kunieda, M. K., Koyama, M., Rai, S. S., Miyaguchi, M., et al. (2017). Effectiveness of community-based peer support for mothers to improve their breastfeeding practices: A systematic review and meta-analysis. PLOS ONE 12(5): e0177434. doi.org/10.1371/journal.pone.0177434
  11. Siregar, A. Y. M., Pitriyan, P., & Walters, D. (2018). The annual cost of not breastfeeding in Indonesia: The economic burden of treating diarrhea and respiratory disease among children (< 24mo) due to not breastfeeding according to recommendation. International Breastfeeding Journal, 13:10. doi: 10.1186/s13006-018-0152-2.
  12. Victora, C. G., Bahi, R., Barros, A. J., França, G. V., Horton, S., et al. (2016). Breastfeeding in the 21st century: Epidemiology, mechanisms, and lifelong effect. The Lancet; 387: 475-490 doi.org/10.1016/S0140-6736(15)01024-7.
  13. World Alliance for Breastfeeding Action. (WABA, 2018). WARM CHAIN of Support for Breastfeeding.
  14. World Health Organization. (2009).Baby-friendly Hospital Initiative: Revised, Updated and Expanded for Integrated Care. Section 3: Breastfeeding Promotion and Support in a Baby-friendly Hospital, a 20-hour course for maternity staff
  15. World Health Organization. (2018). Key messages for World Health Day 2018
  16. World Health Organization. (2018). Increasing breastfeeding could save 800 000 children and US$ 300 billion every year.

ラ・レーチェ・リーグ(LLL)は“母乳で育てたいお母さんを支援する”ボランティア団体です。「1対1の人間的なあたたかみを大切にし、お母さんがお母さんの思いに寄り添いながら支援する」ことを原点に、母乳育児の情報を提供し、励ます活動をしています。1956年にアメリカで誕生して以来、世界中に活動が広がりました。7人の創設者が始めた「母親から母親へ」という独特の支援の方法は、半世紀以上経った今もなお、世界各国のラ・レーチェ・リーグ リーダーに受け継がれています。https://llljapan.org/

世界保健行動連盟(WABA)は、世界規模で母乳育児を保護・推進・支援する個人と組織の世界的ネットワークです。WABAの活動は、「イノチェンティ宣言」、「すばらしい未来を作り出すための10のリンク(連結)」、「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」に基づいています。WABAの現在の中心団体は、乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)、国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA)、ウェルスタート・インターナショナルと母乳育児医学アカデミー(ABM)。WABAは、ユニセフ(国際連合児童基金)の諮問資格を有し、また、国連経済社会理事会(ECOSOC)の特殊協議資格をもつNGOです。https://waba.org.my

日本では、母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan)がWABAの支援団体として登録され、WABAから毎年発行される世界母乳育児週間のパンフレットを日本語に翻訳して紹介しています。https://bonyuikuji.net


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