ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)と世界母乳育児行動連盟(WABA)
世界保健デーを祝う共同声明 2021年4月7日
https://www.llli.org/2021-world-health-day-improve-global-breastfeeding-practices/
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは世界各地にとって大きな試練となっています。また同時に地域、国、共同体などによって多くの健康格差があることをあらわにしました。すべての人に、より健康でより公平な未来を保障するのはこれまで以上に重要です。母乳育児は健康で公平な社会を作り出す基盤です。社会や経済的な状況がどのようなものであっても、乳児や子どもたちに最適な人生の始まりを与え、発達の機会と健康を底上げするからです。母乳はすぐに飲ませることができ、栄養的にも優れ、子どもの発達に必要なものが備わっています。世界保健機関(WHO)と国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)は、乳児が生後6ヵ月間母乳だけを飲み、その後栄養が十分な補完食を食べながら2歳かそれ以上まで母乳を飲み続けることを推奨しています。世界では生後6ヵ月間母乳だけを飲んでいる赤ちゃんは全体の約41%で、2歳まで母乳を飲み続ける赤ちゃんは45%にしかすぎず、母乳で育てられている割合は地域、国、共同体などによって大きな違いがあります。
母乳育児の重要性はよく知られており、子ども、母親、家族、さらには地域の人々の心身の健康によい影響を与えます。母乳で育つことで子どもたちは感染症にかかりにくくなります。下痢、下気道感染症、中耳炎になりにくく、なったとしても軽くすみます。むし歯や不正咬合にもなりにくくなり、最適な認知発達をしていきます。母乳で育つ子どもはより強く反応しやすい免疫系を確立します。これは現在のパンデミックの世界において特に重要です。母乳育児は母親の心身の健康にも大切な役割を果たします。乳がんや卵巣がん、骨粗しょう症、心血管疾患、糖尿病にかかるリスクも低くなります。
さらに、母乳育児は、世帯、国、世界にとっても医学的にも経済的にも長期的によい影響があります。病気にかかりにくいので親の欠勤も少なく、医療費も安く、医療システムや地域の経済に負担をかけません。したがって、母乳で育てる人が多くなることで、すべての国が得をします。報告によれば、(国の政策や支援の欠如によって)母乳が与えられなかった場合の経済的損失は、世界中で3,413憶米ドルにも上ります。
母乳を飲ませる代わりに2歳まで乳児用ミルク製品を使った場合、世界の平均で世帯収入の6.1%のコストがかかります。乳児の健康と安全を支えることで、母乳育児は家族の食糧安全保障に貢献し、世帯の経済に負担をかけません。低収入の世帯にとってはとりわけ重要なことです。新型コロナウイルス感染症のパンデミックのような危機的状態のときには、多くの世帯は収入が不安定になったり収入を失ったりしますので、さらに不平等は加速します。母乳で育てることで世帯支出を減らし、最適な栄養と健康を約束し、不平等を減らすことができます。
母乳育児を応援するような保健医療方針と実践は母乳で育てる人を増やします。が、赤ちゃんにやさしい病院で産めるかどうかを含めて、格差は続いています。赤ちゃんにやさしい病院運動(BFHI)は1991年に始まりました。その目的は、障壁を取り除くことで、母乳育児を保護することにあります。母親が病院で母乳育児がスムーズに始められ、退院後も母乳育児を継続できる支援が受けられるようにします。しかし、2017年の時点で、世界の乳児のうち「赤ちゃんにやさしい病院」と認定された施設で生まれているのはわずか10%にしかすぎません。多くの貧しく社会的に脆弱な母親や家族は、病院や産科施設で母乳育児を保護し応援してくれる実践を受けることができずにいます。また、赤ちゃんにやさしい病院の中でさえ、母乳育児支援に差があるという報告があります。母乳育児支援のトレーニングを受けた保健医療スタッフが少ないことも関連した問題の1つです。2021年は保健医療従事者とケアワーカーの国際年です。前線で働く保健医療従事者とケアワーカーの教育、能力を高め、働く環境を改善する権利を擁護する必要があります。彼ら/彼女たちは、母乳育児支援も提供しています。
職場復帰は、母乳だけで育て母乳育児を継続するための大きな障壁です。有給の産休があり、職場に理解があれば、こうした障壁を乗り越えられることは知られています。しかし、多くの母親は十分な支援を受けることができません。組織化されていない大規模な非公式(インフォーマル)セクターにおいて、このことは特に顕著です。家族や地域の理解とサポートの欠如も、思っていたよりも早くに母乳をやめる理由の1つです。母乳育児の教育を祖父母や一般の人々に広げる健康啓発キャンペーンをすることで、社会全体に母乳育児が大切だという意識付けにつながることでしょう。社会的弱者や脆弱な社会状況のニーズや困難に対応できるような柔軟な対策も必要でしょう。
このパンデミックが続く中、2021年の世界保健デーにおいて「私たちの世界は不公平である」ということを改めて思い起こし、より公平で健康的な世界を築くために協働していきたいものです。子どもに寄り添いながら最適な授乳(注:生後6ヵ月間は母乳だけで育て、その後補完食を食べさせながら2歳かそれ以上まで授乳を続ける)ができるようになれば、子どもの成長や発達に影響する健康格差を減らすことができ、健康な人生を送る最良の機会を子どもに与えることができます。ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)と世界母乳育児行動連盟(WABA)は、政府、国連機関、保健医療システム、労働組合、職場、地域、市民社会の団体に対し、以下を呼びかけます。
参考リンク:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kokusai/who/worldhealth2021_01.html (世界保健デー2021について厚生労働省のサイト) 2021年4月現在
ラ・レーチェ・リーグ(LLL)は“母乳で育てたいお母さんを支援する”ボランティア団体です。「1対1の人間的なあたたかみを大切にし、お母さんがお母さんの思いに寄り添いながら支援する」ことを原点に、母乳育児の情報を提供し、励ます活動をしています。1956年にアメリカで誕生して以来、世界中に活動が広がりました。7人の創設者が始めた「母親から母親へ」という独特の支援の方法は、半世紀以上経った今もなお、世界各国のラ・レーチェ・リーグ リーダーに受け継がれています。https://llljapan.org/
世界保健行動連盟(WABA)は、世界規模で母乳育児を保護・推進・支援する個人と組織の世界的ネットワークです。WABAの活動は、「イノチェンティ宣言」、「すばらしい未来を作り出すための10のリンク(連結)」、「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」に基づいています。WABAの現在の中心団体は、乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)、国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA)、ウェルスタート・インターナショナルと母乳育児医学アカデミー(ABM)。WABAは、ユニセフ(国際連合児童基金)の諮問資格を有し、また、国連経済社会理事会(ECOSOC)の特殊協議資格をもつNGOです。https://waba.org.my
日本では、母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan)がWABAの支援団体として登録され、WABAから毎年発行される世界母乳育児週間のパンフレットを日本語に翻訳して紹介しています。https://bonyuikuji.net
母乳のこと、離乳食のこと、月齢とともに変わる育児の悩み。
ラ・レーチェ・リーグの「つどい」はなんでも話せる、ママたちの居場所です。