ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)と世界母乳育児行動連盟(WABA)
世界保健デーを祝う共同声明 2019年4月7日
https://waba.org.my/joint-statement-in-celebration-of-world-health-day-universal-health-coverage/
ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル (LLLI)と世界母乳育児行動連盟 (WABA) は、母乳育児の面からユニバーサル・ヘルス・カバレッジ (UHC:すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること) に焦点を当てて、2019年の世界保健デーを祝います。「すべての人とコミュニティーが必要な場で必要な時に質の高い保健医療サービスを受けられる」ためにUHCは根本的に非常に重要なものです。(1) 質の高い保健医療サービスとは母乳育児支援のケアを含みます。プライマリ・ヘルス・ケアのシステム内の構成員とコミュニティーを結ぶことで「母乳育児支援のための温かい輪」が作られます。またその連携はすべての人がユニバーサル・ヘルス・カバレッジの恩恵を受けるための礎を築きます。母乳育児がうまくいくためにはチームワークが必要です。赤ちゃんが母乳で育てられるように、母親、父親、パートナー、家族、職場、そしてコミュニティーをエンパワーする必要があります。
国や地域の保健医療システムが、プライマリ・ヘルス・ケアをしっかりと提供することが、家族が自らの母乳育児の目標に到達する助けになります。保健医療システムに関与するすべての人が、家族がこの礎を築くのを助けられるように、十分な知識とコミュニケーション・スキルを持つことがとても重要です。
母乳育児はいのちの礎です。母乳は子どもの健やかな成長と発達のための土台を提供します。母乳は成長のためにちょうどよい量の栄養素を含み、消化されやすく、いつでも手に入ります。初乳は生まれたての赤ちゃんのために栄養が濃縮されており、多くの有害菌から赤ちゃんの未熟な免疫システムを防御する生きた抗体が含まれます。初乳に代わって産生される成乳は、継続して子どもの発達ニーズに応じ、最良の成長を支えるのに必要な脂肪、たんぱく質、炭水化物、カロリーを提供します。(2)
また、母乳育児は過体重や肥満のリスクの軽減に関連があり、2型糖尿病のリスクを下げる可能性があります。母乳を飲むことで赤ちゃんがすくすく育つだけではなく、母乳には一生涯続く利点もあります。母乳には抗体、つまり免疫システムを守るものが含まれています。母乳を飲むことで、下痢、肺炎、感染症などの多くの病気にかかりにくくなります。(5,6) 保健医療システムは、家族が自らの母乳育児の目標に到達するのを助ける重要な役割を果たします。授乳期間の長さにかかわらず、少しでも母乳をあげることで赤ちゃんに恩恵があるのです。出産時から母乳育児を支えるしっかりとしたプライマリ・ヘルス・ケアのシステムによって、乳児に最良の健康の始まりと共に、一生続く健康への利点を提供します。(2,3,4,7)
母乳育児には母親の健康にとっての利点もあります。例えば、乳がんや卵巣がんにかかるリスクを減らし、2型糖尿病、循環器疾患にかかるリスクを減らし、自己免疫疾患から守ります。(4,8-11) WHO (世界保健機関) やUNICEF (ユニセフ、国連児童基金) の推奨のように母乳で育てることで、妊娠間隔を空ける助けになる可能性もあります。(9)
WHOとUNICEFは、子どもの生涯の健康のため、生後6ヵ月間は母乳だけで育て、6ヵ月からは補完食(離乳食)をあげながら2歳かそれ以上母乳育児を続けることを推奨しています。(12)とはいえ、多くの家族は、保健医療施設の方針やシステムが原因で、あるいは、母乳育児の支援を十分に保健医療従事者から受けられないことから、十分な保健医療に公平にアクセスできているわけではありません。(13) したがって、すべての家族が、そうした十分な保健医療へアクセスできるようにすることが非常に重要なのです。
WABAのWarm Chain of Support for Breastfeeding「母乳育児支援のための温かい輪」運動は、赤ちゃんの「最初の1000日間」(妊娠してから満2歳)*、母乳で育てている親子が途切れのないケアを受けられるようつなげようという運動です。(14) 温かい支援の輪の中で一貫性のある情報を受け取ることで、母と子は継続支援とスキルのある援助を受けることができます。そうして、すべての母親は、より満足のいく、母乳がうまくいく経験によってエンパワーされます。
【訳注】妊娠中から満2歳までの母子の栄養がその後の人生の健康の要となるため、その重要性を喚起するために用いている表現。
「赤ちゃんにやさしい病院(BFH)」は、母乳育児を応援する方針により、一貫性のある情報を提供します。そうした方針は、産前、出産後の数分、数時間、そして数日間に大きな影響があります。(15) また、「母乳育児がうまくいくための10のステップ」の中のステップ10は、母乳で育てている母子のために、産科施設を退院した後のフォローアップの大切さを語っています。母乳育児を生涯の健康の礎として応援するシステムの中で、フォローアップするのは、母乳育児のサポート・グループ、地域のクリニック、あるいは開業している保健医療従事者かもしれません。支援先がどこであれ、産科施設は、退院時に、母乳育児をしている母子を知識のしっかりした支援先につなげていく必要があります。LLLIなどの母乳育児ピアサポートグループは、家族やコミュニティーにこうした支援を提供しています。(16)
母乳育児は、赤ちゃん、母親、そして国にとっても利点があります。WHOはプライマリ・ヘルス・ケアが、一生涯必要であることを強調しています。一生涯健康によい影響を与える母乳育児にとって、プライマリ・ヘルス・ケアとより広い範囲に及ぶ「温かい支援の輪」が必要です。親をエンパワーし母乳育児ができるようにするためにも、すべての人がユニバーサル・ヘルス・カバレッジを利用でき、アクセスしやすくするようにしなければなりません。
For more information, please contact:
La Leche League International (LLLI): Lee Claassen Executive Director
World Alliance for Breastfeeding Action (WABA): Chuah Pei Ching Health & Information Coordinator
ラ・レーチェ・リーグ(LLL)は“母乳で育てたいお母さんを支援する”ボランティア団体です。「1対1の人間的なあたたかみを大切にし、お母さんがお母さんの思いに寄り添いながら支援する」ことを原点に、母乳育児の情報を提供し、励ます活動をしています。1956年にアメリカで誕生して以来、世界中に活動が広がりました。7人の創設者が始めた「母親から母親へ」という独特の支援の方法は、半世紀以上経った今もなお、世界各国のラ・レーチェ・リーグ リーダーに受け継がれています。https://llljapan.org/
世界保健行動連盟(WABA)は、世界規模で母乳育児を保護・推進・支援する個人と組織の世界的ネットワークです。WABAの活動は、「イノチェンティ宣言」、「すばらしい未来を作り出すための10のリンク(連結)」、「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」に基づいています。WABAの現在の中心団体は、乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)、国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA)、ウェルスタート・インターナショナルと母乳育児医学アカデミー(ABM)。WABAは、ユニセフ(国際連合児童基金)の諮問資格を有し、また、国連経済社会理事会(ECOSOC)の特殊協議資格をもつNGOです。https://waba.org.my
日本では、母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan)がWABAの支援団体として登録され、WABAから毎年発行される世界母乳育児週間のパンフレットを日本語に翻訳して紹介しています。https://bonyuikuji.net
母乳のこと、離乳食のこと、月齢とともに変わる育児の悩み。
ラ・レーチェ・リーグの「つどい」はなんでも話せる、ママたちの居場所です。